世界各国の性機能障害

性機能障害は本人にとってやっかいな悩みであるばかりでなく、パートナーにとっても 深刻な問題である。特に若いカップルにとっては性交や射精がないと子供ができないとい う問題もあり、より深刻である。しかし、これまで性機能の問題はあまり正面切って取り あげられたことはなかった。ところが1998年から欧米で、1999年からわが国でも勃起機 能障害に対する経口治療薬であるクエン酸シルデナフィル(バイアグラ®)が発売されたの を機に、この男性性機能障害の問題がにわかに注目されるようになった。

しかし、性に関する先進国である欧米でも性機能障害の実態が明らかではなく、ここに きてようやく全世界で性機能障害の実態調査が試みられつつあり、今後その実態が次第に 明らかにされるものと思われる。このように性機能障害の実態が明らかになりにくかった 理由の一つには性機能障害は直接生命にかかわらないこと、本人自身性機能障害は病気と いう認識が低いので、なかなか病院に行きたがらないためである。性機能障害は明らかな 病気であるが、本人も周囲の人も病気だと認めないことが多く、なによりも‘‘恥ずかしく て訴えにくい’’ということがある。また医者自体があまり深刻な問題ではないという認識 があったりして真面目に取り合ってくれなかったり、また、わが国では専門にこの問題を 扱う医師もごくわずかで、しかも、このような専門医がどこにいるかの情報も不足してい るため、何処に訴えに行ったらよいのかわからず、一人で悩んでいる人が多いためである。

この男性の性機能障害には性欲の障害(性欲の減退あるいは欠如)、勃起障害や性交障害 (勃起がなかなか起こらなかったり、勃起があっても不十分だったり、維持ができないため に満足な性交ができない)、射精障害(早漏だったり、遅漏だったり、まったく射精がみら れなかったり)、オーガズムの障害(オーガズムの減退あるいは欠如)などさまざまなタイプ の障害がある。われわれがこれまで扱った性機能障害の中では勃起障害が圧倒的に多く性 機能障害を訴えて来院した患者の約9割を占めていた。

性欲の減退を訴える患者は、本人はこのことをあまり苦痛に感じていないので本人が訴 えることは殆どない。

射精障害、特に早漏は新婚ヵップルでは結婚当初ごく普通にみられるもので、時間の経 過とともに自然に射精までの時間が長くなっていくが、結婚当初の早漏を病的と思い込み、 神経質になり本当に早漏になってしまうことも稀ながらみられる。

男性の性機能障害の中でも最も多い悩みである勃起がなかなか起こらなかったり、勃起 がみられても不十分だったり、勃起はするものの持続できないなどのために満足な性交が できない(NIHの定義)いわゆる勃起障害:EDがわが国にどのくらいいるのかこれまで一度も正確な調査が行われたことはなかった。これは単にわが国だけの問題ではなく、世 界でどのくらいのED患者がいるか調査されたことはなかったのである。それは一つには 性に関する問題は極めて秘密に属する問題で他人には話したくないということもあり、特 にわが国ではEDは病気だという認識が低いので、厚生省は3年ごとに患者数の調査をし て総理府統計局より「患者調査」として報告しているが、この患者統計の中にもEDは含 まれていないのである。そこでわれわれは1987年にいろいろな疾患に合併するED、例え ば糖尿病には何%のEDが合併するか、骨盤内臓器の癌である直腸癌や膀胱癌に対する根 治手術後にEDが何%発生するのか報告されているので、厚生省で発表されるこれら疾患 の患者数にED合併率を掛けて各種疾患に合併するED患者数を算出する方法でわが国の ED患者数を推計したことがある。この折りのED患者数は最少で2,073,300人、 最大4,160,000人、平均3,120,000人であった。ところが同じ方法で1998年のED患者数 を推計してみると最少4,411,900人、最大9,506,400人となっており、この10年間にED 患者数が2倍以上に増加していることがわかった。)。この増加の主な要因は加齢に伴 うED患者数が著しく増加したことによることがわかっている。これは人口の老齢化の影 響が現れたものであり、今後高齢のED患者数がますます増加の傾向を示すものと思われ る。

Add a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です