性機能障害とは

性行為を完遂するためには性欲が十分あり、陰茎が勃起し、膣内挿入も射精も可能でオー ガズムも十分であることが必要で、これらのいずれが欠けても、あるいは不十分でも満足 な性行為は不可能である。そこで日本性機能学会では性機能障害(sexual dysfunction)は 「性欲、勃起、性交、射精、ォーガズムのぃずれか一っ以上欠けるかもしくは不十分なもの」 と定義している。

この性機能障害はわが国ではインポテンス(勃起障害あるいは勃起不全)と混同して使用 されることが多いが、厳密には異なっている。日本性機能学会によるとインポテンスは「性 交時に有効な勃起が得られないために満足な性交ができない状態と定義し、通常性交の チャンスの75%以上で性交が行えない状態」と定めており、性欲の減退や射精障害などは これに含めないとしている。したがってインポテンスは性機能障害の中の一つということ ができる。

インポテンスはimpotentiaというラテン語に由来し、in=not,potentia=powerで不 能(症)を意味し、この性的不能症という言葉は患者にとっては屈辱的で差另啲用語である ことから、アメリカ精神医学会の疾患分類(DSM-IV)や世界保健機関(WHO)の精神疾患 分類(ICD-10)でもインポテンスは使用されなくなっている。そしてインポテンスに代わっ て英語のerectile dysfunctionの頭文字をとってEDと呼ばれるようになってきている。 しかし、まだ国際的にも国際インポテンス学会とかアジア.パシフィックインポテンス学 会などもあるし、雑誌名などにもインポテンスという用語が残っている。

わが国では日本インポテンス学会だったものを1990年に日本性機能学会に学会名を変 更しているし、学会雑誌名も「Impotence」から「日本性機能学会雑誌」に変更された。

このEDの定義も1993年勃起障害に関するアメリカのNational Institute of Health (NIH)のコンセンサス会議で定められた「勃起の発現あるいは維持できないために満足な 性交ができない状態」が世界的に用いられるようになっている。

正常な勃起機能には勃起に関与する神経系、血管系、陰茎海綿体組織、ホルモン系、と 精神の諸因子が関与している。これら因子のいずれに障害があっても(多くの場合一つの因 子だけでなく多くの因子が絡み合って発症していることが普通)正常な勃起機能は保たれ ずEDに陥る。このような勃起に関与する血管系、神経系、ホルモン系、あるいは陰茎海綿 体などの異常、あるいは病変によって引き起こされる器質性EDとこれら身体的に何ら異 常、あるいは病変がなく、精神および情動の変化によって引き起こされる心因性(機能性) EDに大別することができる。しかし実際にはEDの大半は器質性と心因性要因 が入り交じっている混合性EDである。

最近 International Society for Impotence Research(ISIR)【2000 年11月末にオース トラリア、パースで開催された第9回世界インポテンス会議から学会の名称がInterna-tional Society for Sexual and Impotence Research(ISSIR)に変更になったので今後発表 される分類などはISSIRの分類と呼ばれると思うが,既に発表されているものはISIRの 名称をそのまま使用することにする】では新しい分類を発表しているが3今、この 分類のところは少し混乱している。それは勃起のメカニズムの解明が進み分子レベルで明らかになってきたので、心理的要因で起こる心因性EDで性的興奮を伝える神経伝達物質が陰茎海綿体の平滑筋にうまく作用しないのと、外傷や手術などで神経が損傷されて起こる器質性EDで、神経から神経伝達物質がうまく出なくて陰茎海綿体の平滑筋がうまくかない人と分子レベルでみるとたいした差がないのではないかということがわかってき て、心因性とか器質性といった分類はもはや時代に合わないのではないかと考えられるよ うになっているからである。現在この分類などをさらに見直す作業がISIRを中心に進め られており、近い将来もっとすっきりした時代に合った分類ができる予定である。しかし 本書では従来の日本の分類を使用することにする。

Add a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です